代表質問 平成23年9月15日

さらに、7月末には、新潟・福島を豪雨が襲い、今月初めには、台風12号が紀伊半島を中心に歴史に残る大被害をもたらしました。
これらの災害により尊い命を失われた方々に深く哀悼の意を表しますとともに、被災された方々に心よりお見舞いを申し上げます。
東日本大震災は、我が国が直面する最大の危機でありますが、現在、他にも、少子高齢化、財政の悪化、産業の空洞化、周辺諸国の台頭、そして地球規模の気候変動など、構造的な問題は数多くあり、我が国は、世界に類例のない課題を抱えた「課題先進国」と呼ばれてきました。 このような時代を生きる我々には、これまでの国のあり方を根本から見直し、未来へ向かっての、我が国の新しい繁栄の形を目指して、世界の模範となるような国造りを追求することが求められています。
我々参議院自民党は、政府に対し、協力すべき所は協力し、批判すべき所は批判しながら、国を立て直していく考えです。

(1)国会会期
しかしながら、まず総理に強く抗議申し上げたい点があります。それは、今国会の会期の決め方についてであります。現在の我が国を取り巻く厳しい状況を考えたら、たった4日で閉会するのではなく、1分1秒を惜しんで、我々は議論すべきでありますが、政府・民主党は強引に会期を4日間と決定致しました。国会は、一日も休んでいる場合ではありません。政府・民主党は、予算委員会の審議を閉会中に行おうと提案されていますが、重要な予算委員会を開こうと言いながら、なぜ一度国会を閉じて、あえて閉会中審査とする必要があるのでしょうか。政府には国民への責任を果たす気持ちがあるのかと疑わざるを得ません。
国民は政府と国会の行動を注視しています。このやり方の、どこが「正心誠意」なのでしょうか。言っていることとやっていることが全く違うではありませんか。
今国会の会期を4日間とした理由と、なぜ国会を閉会して予算委員会を行なうのか、国民が理解できるように、総理、ご説明下さい。

(2)国家像
一昨日の所信表明演説を伺い、私は大変失望致しました。この国難を突破して、どういう国づくりをしていくのかという総理の目指す国家像を演説からは全く感じ取ることができなかったからであります。
総理は自らを「ドジョウ」と称していますが、その心構えも大切ですが、一国のリーダーには、泥の中から空を見上げるばかりではなく、大所高所から世界を見渡すような、大局観、世界観が必要です。
これは、おそらく総理個人の問題と言うばかりでなく、民主党に党の基本理念を示す綱領がないということも大きな原因だと思います。
我々自民党は、綱領において、自らを「常に進歩を目指す保守政党」と位置付けています。そして、「正しい自由主義と民主制のもとに、時代に適さぬものを改め、維持すべきものを護り、秩序のなかに進歩を求める」ことにより、「主権を自ら守り、国際社会の責務を果たす国家」、「家族、地域社会、国への帰属意識を持ち、自立し、共助する国民」、「地域と家族の温かい絆のある社会」を作っていくというビジョンを国民に示しています。
そこで、総理が目指し、民主党が目指す国家像とはどういうものか、明確にお答えください。

(3)憲法改正
国家の根幹を表わす憲法の問題は、国の在り方を考える上で極めて重要であります。総理は著書『民主の敵』の中で、ご自身は「新憲法制定論者」であると述べ、憲法九条、プライバシー、知る権利、地方自治など、議論すべき点を挙げておられます。
我々自民党は、かねてより新憲法の制定を目指しており、平成17年には「新憲法草案」を作成、現在も「憲法改正推進本部」において、新たな憲法の姿を議論しています。もし、総理が憲法改正を本気で目指されるのであれば、我々は共に議論を尽くしたいと考えています。
野田総理、総理であり民主党代表であるという立場になられた今でも、憲法改正を目指すお考えに変わりはないか、伺います。
総理には、「自分の考えは変わらない」と言って頂きたいところですが、民主党の実際の行動を見ると、憲法改正を行う気はないようです。民主党は前国会で、この臨時国会中に憲法審査会の人選を行うと約束したにも関わらず、憲法審査会規定で決まっている委員の人選を拒否しているからです。これは、民主党の怠慢であり、国家の基本である憲法について議論さえ出来ないということでは、政党としての責任を果しているとは言えません。
民主党代表の立場として、憲法審査会の人選を、今国会中に行うという合意を守るということを総理に明言していただきたいと思います。如何でしょうか。[/vc_column_text][vc_column_text](4)民主党政治の総括
総理の演説では、これまでの2年間の民主党政治に対する総括が全く見られないことにも、失望致しました。偽りのマニフェスト、法治主義を踏みにじる行政手法、誤った政治主導、国益を損なう外交、不適切な閣僚人事など、これまでの民主党政治で改めるべき点は、いくつもあるはずです。
選挙を経ずして3人目の総理となっている野田総理に、本来、政権を運営する正当性はありません。
総理自身、著書の中で、小泉政権以降の自民党政権を批判して、「民意の裏付けのない政権が、国の舵取りをし続けるということでいいはずがありません」と述べています。現在は、まさにこれと同じ状況です。
自らの過去の発言に責任を持つならば、解散総選挙で国民に信を問うべきであります。
「大震災の復興の最中だから総選挙は行えない」という声もありますが、民主党は、現実性のないマニフェストで国民を騙し、その上、そのマニフェストさえ大幅な見直しを行い、政権を獲得した存在理由を失っています。民主党政権は、復興対策に於いても、迅速で的確な政策決定が出来ず、民主党が政権の座にあることこそが復興の妨げであり、国益を損なっています。
国民の信を得た力強い政権を作ることこそが国民と国家のためであり、衆議院の一日も早い解散総選挙を行うべきであると考えます。総理の考えをお伺いします。
さらに、代表選前には、雑誌に「2年間の反省を踏まえて、民主党が立ち直る姿を見てほしい」と書かれています。ならば、まずは反省をすべきです。
総理、これまでの民主党政治は、どこが間違っていたとお考えでしょうか。また、間違っていた点は、どのように改善していくのでしょうか。国民に納得がいくようにご説明下さい。
それができないなら、政権を担う資格はありません。国民に直ちに信を問うべきであります。

(5)閣僚人事の基本方針
さらにもう一点、総理に確認したいことがあります。それは、閣僚人事の基本方針です。野田内閣の閣僚には、その資質に疑問がある方が数多く含まれています。
ある殺害事件に関し、「彼らにも犯罪を犯す事情があった」と被害者の親に言い放った、平岡法務大臣。
タバコを「1箱700円」にすると発言し、閣内の不一致を引き起こしている、小宮山厚生労働大臣。
「死の街」や「放射能をうつしてやる」というような発言をして、被災者の心を踏みにじり、辞任した、鉢呂前経済産業大臣。
震災対応・原発事故対応をはじめとする、菅内閣の対策の失敗に当時の幹事長・官房長官として大きな責任を持つ、枝野経済産業大臣。
マルチ商法業者から献金を受けていた、山岡消費者担当大臣。
牛肉偽装事件で会長らが逮捕された企業から献金を受けていた、古川国家戦略担当大臣。
特に、一川防衛大臣は自ら「私は安全保障に関しては素人だが、これが本当のシビリアンコントロールだ」と述べていますが、周辺諸国との緊張状態もあり、有事の際には厳しい決断も迫られる職務である防衛大臣が素人では、本当に国民の生命を守る任を果たせるとは到底思えません。即刻、適任者に交代させるべきであります。総理の見解をただしたいと思います。
このようにお世辞にも、野田内閣は適材適所とは言えない布陣です。まさに民主党の人材不足としか言いようがありません。
こうした方々を大臣に任命した総理の責任は極めて重いと思います。任命責任についてどう考えるか、総理に伺います。[/vc_column_text][vc_column_text]【震災対応】

政策の中身の議論に移ります。まず、現在最も差し迫った課題である、東日本大震災への対応について伺います。

(1)復旧・復興
大震災から半年が過ぎ、国民やマスコミの中からも、あの当時の菅総理はじめ民主党政権の震災対応、原発事故対応が適切ではなかったとの批判が高まっています。
復旧・復興を進めるには数多くの課題があり、厳しい状況であることは間違いありません。しかし、未だに基本的な復旧すら満足に行われていない場所が多く残されています。
被災者の生活再建や、被災地の経済再建に対する国の施策が迅速さに欠け、行き届いていないことは、総理ご自身も所信表明演説の中でお認めになりました。
我々自民党は、震災発生直後から、対策本部を立ち上げ、過去の経験やネットワークを活かし、総力を挙げて被災された方々への直接的な支援を行ってまいりました。また政府に対しては、577項目にわたる緊急提言を申し入れるなど、積極的かつ主導的に行動してまいりました。
また、復興基本法をはじめ、原発事故の賠償、がれき処理など、復旧・復興に関する重要法案には、我々が作った法律案が基本となって成立したものが数多くあります。しかしながら、既に自民党が国会に提出している「二重ローン救済法案」、「私学復旧助成法案」については、いまだ成立していません。この臨時国会で結論を得るものとされていますので、民主党の速やかな対応を求めるものであります。今後とも、復旧・復興については、我々自民党は責任政党として、政府に全面的に協力してまいります。
こうした我々の努力に比べて、これまでの政府の対応はあまりにも不十分、かつ、遅きに失しており、被災地のニーズに全く応えていません。
野田総理は、被災地を視察されたようですが、総理の所信表明演説からは、被災地で何を感じられたのか、全く伝わりませんでした。被災された方々お一人お一人の話には心が痛みますが、総理が被災地を視察して、何を見、何を感じたのか、総理ご自身の言葉でお聞かせ下さい。また、視察の結果に基づいて、最高責任者であるあなたは何をしたのですか。何か講じた措置があればお聞かせ下さい。

(2)原発事故調査
福島原発事故については、野党3党が共同で、事故調査委員会を国会に設置する法案を提出しています。事故の調査を、政府から独立した立場で国会が行うことは、より公平性、客観性の高い検証を行うために必要であり、この法案を一日も早く成立させるべきであります。
国際的にも大きな影響のあった大事故に対して、キチンとした検証を行うということは、国際的な信頼回復のためにも重要であり、何よりも国民の原発事故に対する不安を取り除くために大切なことであります。
事故調査委員会の設置法案について、「臨時国会において成案を得るようにする」という、当時の安住国対委員長の確認書があります。
この法案を、確認書通り、この臨時国会で成立させる野田総理のご意思を確認したいと思います。
また最近、菅前総理や枝野前官房長官が、新聞やテレビで、原発事故対応の経緯などについて、色々と発言されています。事故はまだ収束していないのに、自分達の職責がなくなったらあれこれしゃべる、というのは、全く無責任ではないでしょうか。
正式な事故の検証作業を始めようという時に、大きな影響力を持つ前総理が、一部メディア等で発言することで、事実が歪んで伝えられたり、他の意見を封殺してしまう畏れもあり、正確な事故調査の妨げになることも危惧されます。 経済産業大臣に就任された枝野前官房長官はともかく、菅前総理が公の場で原発事故について発言することは不適切だと考えますが、総理いかがでしょうか。

(3)復興財源
続いて復興財源について伺います。政府の試算では、復興に約13兆円が必要とされています。財源として、所得税・法人税の増税のほか、たばこ税や、日本郵政株をはじめとする国有資産の売却など、様々な案が取り沙汰されています。
総理は、「まずは歳出削減や国有資産の売却などで財源を捻出し、その上で、時限的な税制措置を検討する」と表明されましたが、具体的に、時限的な税制措置とは何をどうするのか。どの程度を増税で、どの程度を税以外の財源でまかなうつもりでしょうか。お答えください。[/vc_column_text][vc_column_text]【災害対策】

次に、台風12号による被害について伺います。死者・行方不明者100名以上を出しているこの大災害は、未だ被害の全容が把握されておらず、また、土砂ダム決壊の恐れがあるなど、事態は予断を許しません。
いまも不安の中で暮らしている方々のことを思うと、一刻も早く激甚災害に指定し、政府が直接に災害の中にある方々を救わなくてはなりません。
総理は、激甚災害の指定に前向きな発言をされたと伺っていますが、指定はいつになるのか、また、予備費や第三次補正でどのような対応を取るつもりなのか、お答え下さい。
この台風12号も含め、今年、大規模な災害が立て続けに起こったことを機に、防災意識の徹底、防災インフラの整備、災害時の対応策の強化など、災害対策全般について、総合的な見直しを行うべきだと考えます。
民主党は「コンクリートから人へ」というスローガンのもと、公共事業や災害対策の予備費を事業仕分けの対象としましたが、まず、その考え方を改めるべきであります。
人の命は何よりも大切です。そして、道路や砂防ダムで助かる命もあります。コンクリートと人が対立するかのような発想は誤りです。「コンクリートから人へ」という政策を撤回し、災害対策への備えをさらに充実すべきと考えますが、総理の見解を伺います。

【八ツ場ダム見直し】

防災の観点から、八ツ場ダム見直しについて伺います。民主党は政権交代の際に、地元や関係一都五県の同意を得ず、勝手に建設中止を発表しました。
しかしながら、国土交通省では、ダム建設とダム以外の代替案の、どちらが優位かの総合評価を行った結果、13日に、ダム建設が最良であるとの結論を出しています。
コスト面でもダム建設の方が安いということが示されたわけですから、政府がダム建設を凍結する根拠はなくなりました。今後、有識者会議があるようですが、流域住民の生命と財産を守る為、一日も早く完成させることが不可欠で、建設中止の撤回を求めます。国交大臣の所管ですが、総理の見解を伺います。

【エネルギー政策】

次に、エネルギー政策について伺います。福島原発の事故を契機に、我が国のエネルギー政策は全面的な見直しを迫られています。これまで政府は、エネルギー基本計画を白紙に戻して検討することを表明しています。

(1)基本的展望
そこで、伺いますが、総理は、今後のエネルギー政策の基本的な展望について、どのようにお考えでしょうか、ご説明下さい。
特に、原子力発電について、総理は原発再稼働の推進を表明し、中長期的には、原発への依存度を「可能な限り引き下げていく」としていますが、これは原発の存続を前提としていると考えて良いのか、お答え下さい。
また、総理は、「来年の夏を目途に、新しい戦略と計画を打ち出す」と述べましたが、来年の夏では遅すぎます。企業が来年度の事業計画を決める前に、せめて年内には、結論を出すべきであります。
エネルギー基本計画の見直しは、来年の夏ではなく、時期を早めるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

(2)原子力技術の維持
原発に関しては、国内の原発だけでなく、世界的な視野も必要です。我が国が原発に対してどのような政策を取ろうとも、中国をはじめとする新興国では、今後も原発が増え続ける、ということも、厳然たる現実であります。
そのことを考えると、我が国が原子力関係の知見・技術を維持し、原子力の安全性向上に貢献していくことが、世界に貢献する道でもあると考えますが、総理の見解はいかがでしょうか。
また、総理は、原発の輸出を推進すべきとお考えか否か、お答え下さい。

(3)再生可能エネルギー
再生可能エネルギーについては、その比率を上げていくという方向性は、ほぼ国民的な合意が形成されています。また、前国会で成立した再生可能エネルギー買取法案についても、我々の案の丸のみで成立しています。
今後、普及すべきエネルギーの種類や、コストの見積もり、普及のペースに関して検討していかなくてはなりません。
菅前総理は、2020年代前半にその比率を20%にするという目標を掲げ、太陽光パネルを1000万戸に設置すると表明しました。野田総理も、その公約を維持するのでしょうか、お考えを伺います。[/vc_column_text][vc_column_text]【経済政策】

次に、経済政策について伺います。歴史的な水準の円高、高い法人税、貿易自由化問題、労働規制、厳しいCO2の削減目標、電力不足と、我が国の産業界は「六重苦」にさいなまれていると言われています。
このままでは、総理も所信表明演説で触れたように、企業の海外流出が加速し、産業空洞化が進み、日本経済が弱体化してしまいます。
このような状況の中で、我が国経済発展の芽をどこに求めるのか。どういう「新成長戦略」を、どのようなスケジュールで実施するのか、お考えをお聞きします。

(1)円高対策
そこで、まず、特に緊急の対応を要する円高対策について、総理の見解を伺います。
この円高は欧米の経済情勢からくる構造的なものであり、介入のような対症療法では一時的な効果しかありません。安住財務大臣は、先週のG7に出席しましたが、円高対策について各国に「理解を得られた」と述べただけで、具体的な協力・合意は得られませんでした。
このように、円高対策には手詰まり感が強くなっています。総理は所信表明で、立地補助金の拡充や円高メリットの活用といった対策を示されていますが、これは、円高自体を是正する方策ではありません。円高そのものの是正についてどういう対策をとるのか、具体的にお答え下さい。

(2)経済連携の強化
続いて、TPPへの参加をはじめとする経済連携の強化について伺います。菅政権ではTPPへの参加を「平成の開国」と称して突如打ち出した後、大震災の発生によってうやむやにしてしまいました。
野田総理は、経済連携の強化について、特に農業との関係も含め、どのような基本方針をお持ちなのか、伺います。
また、TPPへの交渉参加について、「しっかりと議論し、できるだけ早期に結論を出す」としていますが、具体的にいつまでに結論を出すおつもりか、お聞かせ下さい。

(3)法人税引き下げ
続いて、税の問題について伺います。民主党政権は、一度法人税5%引き下げを決めておきながら、震災後に実施を見送り、復興財源として法人税の増税を含めて検討するなど、企業からすれば、法人税が上がるのか下がるのか、見通しが立たず、長期的経営戦略も策定できずに困っています。
政府としての、法人税についての考えを伺います。

(4)消費税増税
続いて、消費税について伺います。民主党政権は、税と社会保障の一体改革案で、「2010年代半ばまでに、段階的に消費税率を10%まで引き上げる」としています。また、本年度中に法案を成立させることも明記しており、残された時間はあまりありません。
野田総理は、消費税増税を実施する強い決意をお持ちだと思いますが、民主党内の意思統一はできるのでしょうか、また法案の成立に向けて、今後、どのように進めていくおつもりか、お聞かせ下さい。

【財政問題】

ここで、財政の問題に関連して8月の三党合意について確認を致します。自民、公明、民主の三党による合意では、バラマキ4Kと言われる、子ども手当、高校授業料無償化、農業の戸別所得補償のそれぞれの見直しと、高速道路無料化の廃止などが合意されていますが、特に子ども手当については、我々は来年度から児童手当を復活させるとともに、その内容を拡充することで合意された、と認識しています。このことについて、改めて野田総理に確認致します。[/vc_column_text][vc_column_text]【外交・安全保障】

(1)外交方針
次に、外交・安全保障について伺います。中国をはじめとする新興国の台頭、欧米諸国の財政問題の深刻化、中東諸国の不安定化など、我が国を取り巻く国際情勢は大きく変化しつつあります。
特に来年は、米国・フランス・ロシア・韓国の大統領選挙、中国の政権交代、台湾の総統選挙が相次ぐ年であり、「2012年問題」と言われています。選挙の年は、各国が対外的に強硬姿勢を取る傾向があり、国際情勢の不安定化が危惧されています。
今年はそのような意味で、非常に重要な年であり、私が今年1月の菅総理への代表質問でもこのことを指摘しましたが、野田総理はどうお考えでしょうか。
最近では、菅政権の弱腰の外交姿勢の結果、中国の漁業監視船が尖閣周辺の領海に侵入する、ロシアの爆撃機が北海道から沖縄まで日本列島を一周するといった、露骨な挑発を受けています。日本はどうせ手出しができないと、足元を見られているのです。
鳩山政権・菅政権は、諸外国に対し、言うべきことを言わず、守るべきことを守らず、行うべきことを行わず、外交上の失敗や方針転換を繰り返してきました。そのために、我が国は国際的な信頼を失い、孤立を深めています。
世界の政治体制が大きく変革し、新しい世界秩序を構築しようとしている中で、我が国外交は、世界に対する影響力を大きく損ない、世界から取り残されようとしています。我が国の発展と繁栄のためには、世界の安定と平和の構築に寄与し、新しい秩序作りの一翼を担って行くべきであります。
一刻も早く、外交・安全保障上の体制を立て直し、我が国の主権と国益を守り抜いていくことが、極めて重要であります。
総理は来週国連総会に出席されますが、我が国の外交方針など国際社会にどのようなメッセージを発信するおつもりでしょうか、お答え下さい。

(2)沖縄・普天間問題
現在の我が国の外交の基軸となっているのは、言うまでもなく、日米関係です。その重要性は、今後も変わることはありません。
しかし、鳩山政権は、自民党政権時代には地域の理解を得ながら進んでいた普天間問題をこじらせ、沖縄県からの信頼を大きく損ない、日米同盟関係を最悪の状態におとしいれてしまいました。このままでは、普天間基地が現状のまま固定化するという、最悪の事態になってしまう恐れがあります。
野田総理は、普天間問題に関する鳩山政権の失政をどう考えるか、そして今後、普天間基地の移設問題をどう解決していくおつもりか、「沖縄県民の理解を得るよう努力する」の繰り返しではなく、具体的にお答え下さい。
ここで、普天間問題に関連し、防衛政策の全体像について伺いたいと思います。核を保有し、開発を進める隣国がある現状の中で、有事の際に我が国の国民の生命と財産をどのように守るつもりであるのか。緻密なシミュレーションを重ね、本来果たすべき役割を自衛隊が果たせるような対策をとっているのか。私は、「自衛隊は暴力装置」と発言するような幹部が党の中枢にいる民主党が政権を担って以来、我が国の防衛力が低下しているのではないかと危惧を抱いております。
野田内閣はどのような防衛政策を進めるつもりなのか、見解を伺いたいと思います。また、集団的自衛権に関しての見解も併せて伺いたいと思います。

(3)前原発言
民主党の前原政調会長は、米国での講演で、武器輸出三原則の見直しや、自衛隊の武器使用基準の緩和について、踏み込んだ発言をされました。これについて、一川防衛大臣は全く聞いていないと発言するなど、足並みが乱れています。
前原政調会長は、総理が任命した民主党の政策責任者ですから、その発言は極めて重く、民主党の政策であると受けとめられます。
したがって、発言は内閣の方針と一致すると考えてよろしいですね。総理の考えを伺います。[/vc_column_text][vc_column_text]【政策決定システム】

次に、総理の考える政策決定のシステムについて伺います。

(1)国家戦略会議
野田総理は、自民党政権時代の「経済財政諮問会議」をモデルに、「国家戦略会議」を創設することをお考えのようです。実現すれば、これまでの民主党政権で、様々な本部や会議が乱立して、意思決定ができない状況に比べれば、政策決定が円滑になる可能性も高く、その発想自体は評価できます。
しかし、この国家戦略会議は、どのような形になるのか、不明確な部分が多く、唐突に出てきた感が否めません。
政府の意思決定の根幹に関わる重要な組織ですから、これまでの民主党政権で乱立した組織のように、法的根拠なく、権限も不明確な形で設置することは許されません。法的根拠に基づいた明確な権限がなければ、国家戦略の司令塔たり得ないことは、民主党政権の失敗作である「国家戦略室」の例が如実に示しています。
そこで伺います。総理は、国家戦略会議を、法律に基づいて設置するおつもりか否か、お答え下さい。
また、設置のスケジュールと、その権限、すなわち、経済財政以外に、安全保障なども含めた、国の総合戦略を決定する会議にするおつもりなのか、見解を伺います。

(2)与野党の関係
与野党の関係について伺います。 これまで民主党は、参議院で自民党が反対するから、法律や予算が通らないのだと言って来ました。これは全く的外れな指摘であり、我々自民党が政権を担っていた時にも参議院は野党が過半数を占めていましたが、多くの法律を成立させてきました。民主党の未熟な国会運営の責任を我々自民党に転嫁されることは誠に不本意であります。
菅前総理も「熟議の国会」と言っていましたが、相次ぐ閣僚の不祥事や総理自身の思いつき発言などで「熟議の国会」とは程遠い国会となってしまいました。
野田総理も「議会制民主主義の要諦は対話と理解を丁寧に重ねた合意形成にある」と述べておられますが、今回の4日間の会期の決定については、一方的に押し切る暴挙に出ました。このことについて、参議院においては昨日、野党7党国対委員長会談を開き、会期の決め方が一方的であること、また会期が4日間と極めて短いこと、これではしっかりとした審議が出来ないと、政府の代表である藤村官房長官に7党国対委員長が揃って話しをするため、面談を申し入れましたが、なんと断ってまいりました。
丁寧に合意形成すると言っておきながら、話しも聞かないとの態度であり、総理の言葉とは全く相反し、与野党の信頼関係を大きく損ねました。
これでは国民のために議論を尽くす国会運営は到底望めません。総理はどの様な形で与野党の議論を深めていこうと考えているのか、具体的なお考えを伺いたいと思います。

最後に

日本には課題を解決する技術力があります。長い歴史の中で培われた文化力があります。そして、世界から尊敬される心の力があります。日本には大きな人材力があるのです。いま日本に欠けているのは、そうした力を糾合するリーダーの力であり、世界の人々を引きつける、未来に夢を描ける構想力です。
我々は四方を海に囲まれた閉じ込められた国土に暮らしているのではなく、四方が海に開かれた、世界とつながった国土に暮らしています。我々は世界の大きな流れに目を向け、将来を担う子や孫の世代に、誇れる日本を引き継いで行かなくてはなりません。
今は苦しいトンネルの中かも知れませんが、明るい出口を目指して、我々国会は力の限りを尽くして行かなくてはなりません。この厳しい時代を乗り越えた先には明るい未来があると信じて、我々参議院自民党は、政局ではなく政策で、小局ではなく大局で、国家と国民のために、今後も全力で取り組んでまいります。ここに国民の皆様に我々の決意を改めて表明し、総理への質問を終ります。