代表質問 平成23年1月27日

ご高齢にも拘わらず、天皇陛下には日々国民の安寧を願われ、数々のご公務をお務め頂いております。
この様な非礼とも言える態度は、総理、前官房長官のみならず民主党の姿勢にも共通するものであり、今後二度とこのような非礼のないよう猛省を促す次第であります。

さて、来年は「2012年問題」の年であると言われています。
特に世界の政治体制にとっては大きな転換点になります。アメリカ、ロシア、フランス、韓国では大統領選挙が執り行われ、中国では胡錦涛体制から次の指導者へと体制が変わります。
また金正恩(キム・ジョンウン)氏への権力の継承を進めている北朝鮮では2012年を「強盛大国の大門を開く」節目の年としています。
過去の歴史を見ても、各国のリーダーは、選挙の年には「自国の利益を極大化する」ことを国民に訴え、対外的に厳しい姿勢を取ることで自らの求心力を高めようとし、そしてリーダーが代われば、世界の秩序が変わり、現在進んでいるパラダイムの転換は一層加速していきます。
今年は、こうした世界的大転換の年を一年後に控えた大事な年であり、我が国はこれを念頭に体制づくりをしておかなければなりません。
日本の政治が不安定飛行を続けるうちに、諸外国はすさまじいスピードで変化を遂げ、新しい時代の枠組みを構築しつつあります。しかしながら、日本は未だに重苦しい閉塞感に覆われ、新しい時代のスタートが切れずにいます。
国民は民主党の「政治とカネ」の問題を巡っての党内の権力闘争の様子には飽き飽きしています。また国民を脇に置き去りにして、政権を維持することが目的と化したような今の民主党政権に国民はうんざりしています。
国会は、これまで以上に機動的で大局的な議論が求められており、我々はそういう国民の声に応えられる政治を行わなければなりません。また、政府には、国家の将来を見据えた真に国民のための政策立案を行う責任があります。
しかしながら、菅政権は、憲法、外交・安全保障、経済、福祉や教育など、国家運営の要諦において日本をどの様な方向へ導こうとしているのかが不明確であります。
我が党は一昨年、新しい綱領を発表し、「自由と民主主義の揺るぎない信念のもと、新しい時代に対応して常に進歩する保守政党である」ことを宣言しました。そして、「護るべきものを護り、秩序の中に進歩を求める」、「自助自立を基本としながら、共助、公助で支え合う社会」、「努力する者が報われる社会」、「温かい絆のある社会」を作っていくことを国民の皆様に約束しています。
民主党の目指す国家はどのようなものなのか、総理ご自身の考える国家像とはどのようなものなのか、まず総理の政治哲学、国家観をはっきりとお聞きしたいと思います。

(熟議の国会)
昨年秋の臨時国会で、我々は、民主党政権の政策の問題点を厳しく指摘し、我が党のビジョンを示すなど、充実した政策論議を目指していました。しかし、閣僚の失言、暴言、恫喝とそれに伴う、釈明、謝罪が繰り返される体たらくでした。更には尖閣諸島沖での中国漁船の衝突事件への民主党政権の誤った対応と不誠実な説明が原因で多くの審議時間がその問題に割かれる結果となり、政府自らが「熟議の国会」とはほど遠いものとしてしまいました。
国会に対する冒とくとも言える不遜な態度をとり続けた仙谷前官房長官に対する問責決議可決と更迭は当然であり、今国会に於いては各閣僚の皆さんは、そのようなことの無いよう、心してその職務に当たって頂きたい。内閣の責任者として菅総理より、前国会で相次いだ内閣の失態への反省と再発防止への決意をお伺い致します。
我々自由民主党は国民の声に謙虚に耳を傾け、参議院における野党第一党として国会における議論を充実させる責任を自覚し、具体的な対案も示しながら論戦に挑む決意です。
ただし、その前提として政府からもしっかりと方針をお示し頂く必要があります。
しかし、菅総理はTPP、社会保障制度改革、政治改革について、「各党の協議」という言葉を乱発され、自らの理念を具体化するための方針や政策を示すことなく、「各党に」丸投げされました。
ご自身が「国づくりの理念」とおっしゃっている以上は、まずは政府が、法律や予算といった具体的な形にして国会に提案し、賛同を求めるのが筋ではないでしょうか。政府与党が何ら具体的な方向性も示さず、各党協議を求めるのは、これらの問題に関する責任回避と政権延命のための時間稼ぎとしか考えられません。自分たちに何の具体案もないのであれば早々に政権の座から降りて頂きたい。
野党に何でもかんでも責任をなすりつけるのではなく、まず政権与党の責任を果たすことが第一で、建設的な政策論議が行えるようリーダーシップを発揮すべきではありませんか。お考えを伺います。[/vc_column_text][vc_column_text](組閣)
今回の改造内閣を枝野長官は「実務強力推進内閣」と言っているようですが、私たちから見れば、前内閣同様に、閣僚としての資質に甚だ疑問を持たざるをえない方々が入閣しております。
先ず一人目は、江田法務大臣であります。江田大臣は昨年七月までの三年間、参議院議長を務めておられました。申すまでもなく議長とは国権の最高機関立法府の長であり、公平無私な国会運営の責任を負う職務です。しかし、昨年の通常国会の会期末にあたっての運営は、我が国の議会政治の歴史に汚点を残すひどいものでした。
昨年六月に、我が党は、菅総理大臣問責決議案と江田議長不信任案を提出しました。しかしながら民主党は数の力でこれを処理する最後の本会議開会に応じず、従って請願処理や調査会報告も行えず、任期を終えて勇退する議員が本会議場で謝辞を述べる機会を奪う異常な事態にしたのに対し、議長として収拾に乗り出さないまま放置し、通常国会が終わりました。
これらの点からも、江田大臣が公平公正であるべき法務を司る役職に就任するのは適当ではありません。
二人目は、与謝野経済財政大臣であります。
与謝野大臣は、「民主党が日本経済を破壊する」という著書を著すなど、民主党の経済政策を痛烈に批判してきた議員です。その方を経済財政担当大臣として入閣させたことに、国民は呆れかえっています。
与謝野大臣は自民党公認で小選挙区に出馬し、比例区で復活当選できたのですから、今回の行動は与謝野氏に投票した人に対する裏切りであり、直ちに自民党に議席を返上すべきであると思います。
かつて比例区で復活した民主党議員が離脱した時には、当時の菅代表代行は「議席を党に戻した上で行動すべきだ」と発言されました。
そういう経緯がありながら与謝野氏を入閣させたことについての任命責任についてどうお考えですか。お答え願います。
政策の異なる与謝野氏を入閣させるのであれば、民主党政権と同氏との間で「政策合意」があってしかるべきです。
総理、与謝野大臣を入閣させるにあたって、どのような政策合意があったのか、合意内容を国民の前に明らかにして頂きたい。

(外交 五原則)
次に、外交・防衛問題について伺います。
私は麻生内閣で外務大臣を務めましたが、私なりに考える外交の基本原則は五点あります。
先ず第一に、外交は、我が国の国益を守り増進し、国家の主権が侵害され、かつ威信が損なわれることの無いように行うべきものであります。
昨年起きた尖閣諸島沖での衝突事件で、ビデオテープを速やかに公開せず、船長釈放の責任を那覇地検に全てなすりつけ、一地検に外交判断を行わせた菅政権の処理方法は明らかに間違いであり、決定的に国益を損ない、外交史にも大きな汚点を残しました。
第二に、外交や安全保障は、与党も野党もなく、党利党略を離れ、国家本位で推進していくものであり、国民の理解と結束が必要であること。
第三に、基本的に国力以上の外交は出来ないということです。国力とは何か。私は一般的には軍事力、経済力、技術力、文化力などを総合したものだと考えます。従って強力な外交を推し進めるためには、わが国においても防衛力だけでなく、同時に経済力や技術力、文化力などのソフトパワーも高めることが必要です。
第四に、外交は継続性が重要であるということです。鳩山前総理は普天間飛行場の移設先について、選挙の票欲しさに「国外だ、最低でも県外だ」と発言しました。この過去の経緯も全く無視した唐突な発言で、日米の関係を悪化させたのみならず、諸外国にも日本の外交全体に対する不信感を生じさせてしまいました。これは、我が国外交の大きな損失であります。また、安全保障面でも国民に大きな不安を与えました。
五番目は、外交とは歴史を作っていくものであります。我々はその一頁一頁に参画しており、厳しい緊張感と責任感を持って外交に当たらねばならないということであります。
外交とはどうあるべきと考えておられるのか、総理並びに外務大臣各々のお考えを伺います。

(外交 国際貢献)
菅総理は、「日米同盟は我が国の外交・安全保障の基軸」であり、「これを深化させる」と述べていますが、これは、鳩山前総理の「対等な日米関係」という考え方からの路線の変更なのか、具体的な説明を総理に求めます。
また、鳩山前総理が掲げ、昨年六月、十月の所信表明演説で菅総理も触れた「東アジア共同体構想」について、今回の施政方針演説では言及していませんが、菅政権では参議院選挙のマニフェストにも掲げたこの公約を取り下げるということと理解してよろしいのですか。また、今後アジア外交の方針がどう変わるのでしょうか。総理に伺います。
更に総理は、先日の都内での講演で、「一国平和主義」を否定し、「世界平和の為に我が国として貢献して行かなくてはならない。民主党政権になって国連PKOへの派遣人員が五十人強から三百八十人を超える状況になっている」と得意気に述べていますが、民主党政権は、世界各国から感謝され、高い評価でその存続が強く要請されていたインド洋での海上自衛隊による補給支援活動を打ち切ってしまいました。
この活動は二年間で約二十二億円という規模の支援額ではありましたが、国際的に日本がテロと闘う姿勢を効果的にアピールできる活動でありました。
活動を打ち切った民主党は批判をかわすために、アフガニスタン支援として約四千五百億円の巨額な支援を表明しましたが、既に自公政権時代に、同国にはありとあらゆる民生支援を行っており、これ以上危険地帯において日本が実施できることは限られています。
補給支援活動を中止して一年になりますが、アフガニスタンへのその後の支援状況はどうなっているのか、それに要した費用はいくらか、具体的にご説明頂きたいと思います。
インド洋は、我が国の船舶も多く航行する地域であり、この地域での活動は我が国の国益にも適うものであり、私はインド洋での補給支援活動を再開すべきと考えます。総理のお考えをお伺いします。

(外交 普天間)
次に、普天間基地移設問題について伺います。
沖縄の普天間基地移設については、私は一昨年の二月に外務大臣として、ヒラリー・クリントン国務長官と、米国海兵隊及びその家族のグアム島への移転についての協定に署名した当事者ですが、民主党政権になり、基地移設問題が暗礁に乗り上げ、後退したことは非常に残念であります。ロードマップで規定しているこの海兵隊の移設計画も、更には千代田区とほぼ同面積で東京ドーム二百十個分の面積に相当する米軍施設区域の土地の返還も遅れることになります。
鳩山前首相の熟慮に欠けた一言で、普天間の騒音や危険の除去が進まないばかりか、返還される広大な土地の沖縄県発展の為の活用も見通しが立たなくなり、民主党政権は取り返しのつかないことをしたのです。
政府は沖縄県民に期待させておきながら、結局、自民党政権と同じ名護市辺野古に移設する案で米国と合意しました。正に迷走であり、政府の体を全くなしていません。
こうした混乱の結果、普天間飛行場が今の場所に固定化するという最悪のシナリオが現実のものとならないか、大変危惧しております。
この混乱に対して誰がどう責任を取るつもりですか。危険性の除去が出来ないまま、いつまでも「ご理解頂く」の繰り返しでは解決できません。この問題を今後どのように進めて行くつもりなのか総理の見解を求めます。
いずれにしても普天間基地周辺の危険を除去するためには、一日も早く日米合意案を実現することであり、政府の一層の努力を求めます。[/vc_column_text][vc_column_text](安全保障)
日本を取り巻く情勢に目を転じれば、中国の名目上の国防費の規模は公表ベースで過去二十年間で約十八倍にもなっています。
先日の講演の中で、総理は「中国の透明性をやや欠いた国防力の強化や海洋活動の活発化に対し懸念を抱かざるを得ない」と表明されていますが、懸念とは具体的にどういうことを指し、また、どのような対策をとるべきと考えているのか伺います。
次に、北朝鮮問題について伺います。
申すまでもなく、我が国にとって、北朝鮮は、安全保障上、最大の懸案国であり、両国の間では、核・ミサイル問題、そして国民の最大の関心事である拉致問題があります。
前原外務大臣は、日朝間の協議について過日の記者会見では、「二〇〇二年の日朝平壌宣言の内容をお互いに確認し合いながら、直接的な対話をしっかりと進めていきたい。…六者協議の開催の是非にとらわれずに、日朝の話し合いというものは行われるべき」と発言をされています。
政府は、日朝二国間協議を進めようという方針なのでしょうか。韓国の示した懸念について、どうお考えですか。
菅内閣は、北朝鮮問題にどのように取り組んでいくのですか。特に、拉致問題はどう取り組むのですか。お考えを伺います。

(財政・予算)
私は、初当選以来、長年予算をみてきましたが、民主党政権が初めて概算要求段階から取り仕切った二十三年度予算案ほど、未来が見えず、理念がなく、その場しのぎの予算案はありません。
過去最大規模の九十二・四兆円という予算ですが、公共事業を始め多くの分野で削減されている中、ばらまきマニフェストの4K、すなわち、子ども手当、高校無償化、高速道路無料化、農家の戸別所得補償の三・六兆円が計上されております。
しかしながら、これらは直接給付型で、乗数効果が低く、ある民間シンクタンクの分析では、この予算がGDPに与える効果は、たったの〇・〇二%にすぎません。
この予算が景気回復に資するという点はどのように分析していますか、国民に分かりやすくご説明ください。

四十四兆円という多額の国債の二年連続発行により、国・地方の借金は八百九十一兆円にのぼり、財政健全化の道筋は、かけらほどもみえません。
それどころか、子どもたちの未来に多額の借金を負わせる「児童虐待予算」とまで酷評されています。
相変わらず所得制限を課さずに続行される子ども手当については、半分が貯蓄に回り、子どもをもう一人持とう、という決断にはつながっていません。
川崎市を始めいくつかの自治体は、財政事情の悪化もあり、地方に負担を押し付ける子ども手当に反対し、予算計上を見送っています。
わが党は、子ども手当は廃止し、地方で自由に使い途を決められる『子育て交付金』をつくり、子育てママの職業復帰支援、育児休業手当の拡充などを推進します。
政府は、子ども手当に関する地方負担に関して、本当に地方の声を聞かれたのか、それでもスキームを変えずに実施する考えなのか、総理に伺います。

農家の戸別所得補償に関してですが、TPPを急ぐなら、強い農業基盤作りが喫緊の課題であるはずです。しかしながら、本予算に盛り込まれた規模拡大への加算はたったの百億円にすぎません。
わが党は、戸別所得補償制度を廃止し、農業農村の多面的機能を評価した『日本型直接支払い』の地域政策と、人や経営に着目した『担い手総合支援』を推進し、農業農村整備事業も拡充し、農地利用の集積を進めます。
効果がないどころか米価の下落を招いている戸別所得補償は即刻やめるべきでありますが、総理のお考えを確認します。

二十三年度予算では、基礎年金の国庫負担二分の一が何とか維持されました。
しかし、その財源として、埋蔵金、なかでも鉄道建設・運輸施設整備支援機構の余剰金一・二兆円が充てられたことは大きな問題で、この理念のない埋蔵金悪用には到底賛成することはできません。
余剰金は旧国鉄の二十四兆円の借金返済と、鉄道関連の整備に充当すべきであり、わが党はその趣旨の法案を臨時国会に提出しました。
なぜ、国庫負担二分の一の財源として、鉄運機構の余剰金を充てる必要があるのか、明確にご説明ください。

菅内閣には、財政健全化への取り組みも全く感じられません。財源確保は、ばらまきマニフェストをやめることや、公務員人件費の削減などで捻出すべきであります。将来世代につけを先送りしないように、財政再建への責任を明確に示す必要があります。
我々は昨年の臨時国会に、財政健全化責任法案を提出し、財政の立て直しを早期かつ抜本的に実施する強い姿勢を示しました。
政府内からはこの法案に賛成してもいいとの声も聞こえてきます。その場合、民主党のマニフェストに根本から矛盾が生じますが、お考えはいかがですか。

(経済・デフレ)
経済政策に関して、伺います。
菅内閣では、「元気な日本の復活」、「平成の開国」、「最小不幸社会の実現」といったスローガンは並べられていますが、何ら具体的政策はありません。
今日の国際化した経済においては、特に成長著しい新興国との連携を念頭に、我が国の成長戦略が必要ですが、全く戦略が描かれていません。
最近では、中国や韓国はもとより、米欧などの各国が政府主導で積極的な輸出促進策へと大きく舵を切るなど、国家主義的な動きが高まっています。
かつて、大航海時代の「重商主義」国家は、覇権を拡張し国家主導の通商戦略を推進しましたが、最近の中国などにも同様の傾向がみられます。
通貨戦争、資源獲得競争が激化し、通商政策に国家戦略が密接に絡み合う二十一世紀の新たなグローバル競争時代が始まっています。
もはや、子ども手当てなどの社会主義的な分配政策に固執し、政府がその帳尻合わせばかりに力を注いでいる余裕はありません。
海外経済交流、海外投資をどのような国家戦略のもとで進め、政府援助や投資の財源確保、人材配置等についてどのような予算的枠組みで推進するのか、などの総合戦略の在り方がいま問われています。
菅総理、「新重商主義」ともいうべき近年の厳しいグローバル競争の展開において、日本経済はどのような方向に進むべきか、お考えをお聞かせください。

菅政権の経済政策では、成長より雇用に力点を置いているようです。
昨年六月に閣議決定された新成長戦略でも、総理は第三の道として「雇用回復こそがデフレ脱却につながる」との持論を展開されました。
しかし現実には、雇用と成長の因果関係は全く逆であり、経済成長があってこその雇用の回復であります。企業に活力を与えず、雇用支援策だけを行うのでは、臨時雇用は生み出しても、持続的雇用回復への道筋が定着することはありません。
したがって、現下、最大の経済問題であるデフレに対する構造的な対策を実行すべきであり、それが有効需要を生み、雇用回復につながります。
しかしながら、先般の総理の施政方針演説では、デフレ対策に触れておらず、財政演説と経済演説の中で「デフレ脱却に向けて、日本銀行と一体となって、政策努力を行ってまいります」と述べられているのみであり、具体的な処方箋は何一つ説明されていません。
それどころか、法人課税五%引き下げのための財源あさりの増税や、唐突な理念なき環境税の導入、最低賃金の拙速な引き上げや製造業への派遣禁止、などのアンチビジネス政策は、まさに国内雇用の空洞化を招く「デフレ促進策」であります。総理はこのことにまったく気づいていないようです。
「成長ないところに雇用なし」との正しい経済認識を持って、政府は、経済政策を成長路線に転換すべきであると私は考えます。総理の見解をお聞きします。
[/vc_column_text][vc_column_text](教育)
次に教育について伺います。
教育、人材育成は個人の人格形成のためのみならず、国家の発展にとって欠くことの出来ない重要な課題であります。
したがって、教育は、誰が総理になっても、どの内閣においても、内閣の最重要課題とすべきものであると私は思います。
中国春秋時代の政治家・管仲の著と伝えられる管子の中の一節にも「一年の計は穀を樹(う)うるに如くはなし、十年の計は木を樹(う)うるに如くはなし、終身の計は人を樹(う)うるに如くはなし」という言葉がありますが、教育は正に未来へ向かっての投資であります。
昨年六月の菅総理の所信表明演説では教育については「人材は成長の原動力です。教育、スポーツ、文化など様々な分野で国民一人一人の能力を高めることにより、厚みのある人材層を形成します。」とのたった一言だけでした。また昨年十月の所信表明演説には、教育という言葉は、どこを探しても出てきません。今回の施政方針演説でも幼保一体化や小学校一年生の一学級三十五人以下、高校授業料の実質無償化の実施について触れただけで、こうした政策のバックボーンとなる教育哲学や、どのような人材を育てるのかという理念が全く述べられていません。教育こそ我が国の明るい未来の創造につながる投資であり、教育を軽視する国家に未来はないと言えます。
菅総理は国家の重要事項である教育について全く関心がないのではないかと思わざるを得ませんが、教育に対する哲学や理念などをこの機会に是非伺いたいと思います。
今から十二年前、私は小渕総理の「富国有徳」という理念のもと、文部大臣として教育改革に取り組み、教育改革国民会議を設置し、教育基本法の改正についての検討をスタートさせました。そして平成十八年に、教育基本法に関する特別委員長として戦後初めて教育基本法の改正を成し遂げることができました。
新しい教育基本法では、幼児期や家庭教育の重要性などとともに、「公共の精神」、「伝統と文化の尊重」、「道徳心」や「我が国と郷土を愛する態度」なども盛り込んだ、国家の大事業である人材育成の根幹を示す基本法を作ることが出来ました。正に道徳心の高い教育・文化国家、道義国家の形成につながるものであります。
菅総理はかつて、国旗・国歌法の制定や教育基本法の改正に反対されましたが、なぜ反対されたのか、また現在も同じ考えなのかご説明願います。
イギリスのブレア元首相は就任時に「一に教育、二に教育、三に教育」と言いましたが、これは国の立て直しには教育改革が何よりも重要だという考えを表明したものです。同様に現在、諸外国においても人材育成の重要性を強く認識し、教育への投資を増やしています。
教育は「知育・徳育・体育」と言われ、そのどれもが重要であります。学力向上のために、十分な対策をとらなくてはならないのは当然であります。しかし今の社会情勢を見ると特に重要なのは徳育であると思います。残念ながら我が国では、民主党政権による事業仕分けなどで道徳教育の予算を削減するという、とんでもない誤った政策をとっています。道徳心・倫理観の豊かな人材を育成するための投資を惜しんではなりません。
私が教育問題担当の総理補佐官を務めていました時に、道徳は教科になっていないので教科書も無く、先生方がそれぞれ工夫して教えていましたので、道徳の補助教材となる「心のノート」を作成し、全小中学校生に無償配布をしました。教師が、教室で使え、児童生徒がいつでもどこでも自分で読んで学び、かつ家庭で親がこれを用いて子供に道徳を教えられるとの目的で作成したものです。
ところが、民主党政権になって、事業仕分けの議論などもあって、無償配布を廃止してしまいました。
子ども手当というバラまきの財源捻出のために、最も重要な道徳教育の予算をカットすることは、正に愚の骨頂であります。
親が子を虐待し、子が親を殺す、更に最近は、高齢で亡くなった親を家の中に放置し年金まで騙し取るという事件が後を絶ちません。現在の日本は大人から子供まで道徳心が薄れ、「日本の心」も次第に失われつつあります。その中で道徳教育関係の予算は、一昨年の自民党政権時代は約十三億四千万円でありましたが、民主党政権下では、今年度はなんと六億三千万円とされ、自民党政権時代の半分以下にまで大幅に縮減されています。
政府はしっかりと予算をつぎ込むべきと考えますが、総理はこの予算の削減と道徳教育の必要性についてどのようにお考えなのか伺います。

(マニフェスト見直し)
民主党は一月十三日の党大会で、岡田幹事長が提案した二○○九年総選挙のマニフェストの見直し方針を了承しました。
このことは財源の手当てが出来ず、先の総選挙で国民に約束したことが不可能であることを認めたものであります。
総理は、民主党に投票された国民に何と説明するのですか。
マニフェストを見直すならば政治責任を明らかにしなければなりません。
速やかに解散・総選挙を行い、国民に信を問うべきであります。総理の決断を求めます。明快な答弁をお願いします。

(憲法)
次に、憲法審査会について伺います。
平成十九年から衆参両院に憲法審査会が設置されましたが、民主党等の反対で、この審査会の開催の目途すら立っていません。
法律で規定されている憲法審査会を早急に始動させて、この中で、憲法改正に向けた議論を行っていくべきであります。
民主党党首でもある菅総理のリーダーシップの発揮を強く求めます。見解を伺います。

(結び)
民主党政権の進める政策には、与えられた時間ではまだまだ言い尽くせない程多くの問題点がありますが、最後に一言だけ重要な点を指摘したいと思います。
いまの政治に最も欠けているものは何か。それは信頼であります。
「民、信なくば立たず」という言葉を閣僚のみならず国会議員一人ひとりが肝に銘じなければなりません。
いま我が国はまさに、再生か、衰退かの瀬戸際にあり、国会は日本の将来像を示し、国民の総合力を糾合していく責任があります。
我々自由民主党は、ゆるぎない信念と強い使命感を持って、真の保守政治を守り、日本を立て直す覚悟であります。
国際社会から信頼される国づくり、誇りの持てる国づくり、そして活力あふれる国づくりのために、全力で取り組んでいくことを表明し、私の質問を終わります。