マンスリーIIC 平成22年1月号掲載

我が国を取り巻く情勢を見ても、隣国の中国は21年連続で軍事費を二桁増し、21年前に比べて22倍の規模にまで膨らみ、核開発も不透明な形で行っております。また、北朝鮮は昨年二度目の核実験を行いましたが、弾道ミサイルの発射も繰り返し、軍備の増強を進めています。
こうした地域情勢の中で、日米安保条約は、我が国国民の生命と財産を守り、日本の国際的地位を安定させ、自由な経済活動を保証する為に欠くことの出来ないものです。
紛争のない世界、核のない世界を各国とも目指してはいますが、我が国としても自国を守るための必要な防衛力は備えておかなくてはなりません。
戦後、吉田内閣以来、歴代の政権は、こうした観点から日米安保条約に基づき、良好な日米関係を築きあげ、世界で二番目の経済力を有する国へと発展させてきました。そして日米関係の緊密化と同時に、国際社会の発展への貢献、近隣アジア諸国との良好な関係の維持の三本柱を中心に外交を進めてきました。
外交は、一軒の家と同様、隣近所と良好な関係を維持するとともに、地域の活動にも参加し、地域社会の発展に寄与することで自分の生活を高めていくものです。自国の発展だけではなく、国際社会の発展に積極的に貢献していくことが、先進国である日本にとっては重要です。
しかし、昨年の鳩山政権が成立以来、沖縄の普天間基地の問題等で、長い年月をかけて築いてきた日米間の信頼関係を根底から揺るがす状況になってきています。こうした状況を非常に危惧しています。
私は外務大臣を務めましたが、これまで日米関係は非常に良好でした。日米同盟が揺らげば、安全保障のみならず、経済問題など様々な分野で悪影響が出てくることが心配されます。
政権交代を理由に、これまでの計画を振り出しに戻し、国家間の合意を覆すことは、信義を欠くばかりでなく、諸外国からの信用も失いかねません。
普天間の移設問題は、十数年間をかけて、米軍による極東地域での防衛力を低下させることなく、また地元沖縄の長年に亘る負担も最大限減らせるようにと協議し合意されたものです。政権が代わったからといって合意を反故にして良いものではありません。この交渉過程においては、住民の賛成派・反対派の分かれている中で、交渉が更に長期化すれば、事故や騒音がいつまでも無くならないということから地元としても了承したものであり、住民の今日迄の心労は八ッ場ダムの問題と同様大変大きなものです。鳩山首相は「友愛」精神を掲げながら、そういう沖縄の方々の心の痛みや関係者のご苦労に配慮しない言動を行っており大変残念です。
「普天間飛行場の移設」と「海兵隊のグアムへの移転」により千代田区に匹敵する程の広大な土地が沖縄へ返還され、沖縄の発展のために活用することができます。そのためにもこの計画は一日も早く実行されなくてはなりません。
先日、私は韓国を訪問し、各界の要人と会談しました。多くの人が普天間の問題で日米関係が悪化することを心配していました。日米同盟が盤石であるということで、各国からの日本への信頼が高まり、またアジアの平和・経済の安定が維持されている現実があるからです。日米同盟の悪化は、日本のみならずアジアへも大きな影を落とします。
外交は、申すまでもなく、我が国の国益を守り増進し、国家の主権が侵害され、かつ威信が傷つけられることの無いように行うべきものです。
また、外交は国力以上のことは出来ません。国の経済力、軍事力、文化力、他国との信頼関係、そして何よりも「国を愛する心」に基づいた国民の理解と結束が必要です。従って強力な外交を推し進めるためには、国力を高めることが重要で、それには内政が安定し、活力あるものでなくてはなりません。また同時に、内政も外交が順調であることが不可欠です。
更に、長期的観点からは、外交はよく言われるように、歴史を作っていくものであり、その評価は後世が行うものです。我々一人一人がその一頁一頁に参画していると言っても過言ではありません。私は外務大臣として外交の責を担うに当たっては、その責任の重さを痛感しつつ日々全力で取り組んでまいりました。
いま我が国は新しい時代へ向けての大きな岐路に立っています。外交は与党も野党も無く、党利党略を離れ、国家本位で推進し、国際社会において我が国に相応しい役割を主体的・積極的に果たしていくことが何よりも重要だと考えます。
松尾芭蕉の言葉に「不易」と「流行」というものがあります。政治においても、守っていくべきものは守り、変えるべきは変えながらも、「より良い日本を後世に受け渡す」という根本を大切にしていきたいと思います。

また、国会議員としてこれまで取り組んできた、伝統や文化を尊重し、日本人の心をしっかりと持った心の豊かな人づくり、そして他国から尊敬され信頼されるような、誇りの持てる活力ある国づくりを目指していきたいと思います。